FGFR1融合遺伝子陽性の骨髄性又は
リンパ性腫瘍(MLN)の特徴
FGFR1融合遺伝子陽性の骨髄性又はリンパ性腫瘍
―疫学・臨床像編―
本疾患は骨髄系またはリンパ系の双方の病態を同時・異時性に発症する造血器腫瘍のひとつです。非常にまれな疾患であり、国内での疾患登録数は少なく、世界的にも報告例の少ない疾患です。また、その臨床像は多彩であり、予後が不良なことも報告されています。
疾患分類
本疾患は、染色体のFGFR1遺伝子が存在する領域「8p11」が切断され、別の染色体の断片と融合することによって引き起こされます。骨髄系腫瘍およびリンパ系腫瘍の双方の病態が同時・異時性に発症することが特徴であり、歴史的に8p11骨髄増殖症候群(EMS)と呼ばれていましたが、WHO分類改訂第4版では好酸球増加と遺伝子再構成を伴う骨髄系/リンパ系腫瘍に分類されています。
Swerdlow SH, et al(Editors). WHO classification of tumours of haematopoietic and lymphod tissues. Lyon: IARC Press;2017より抜粋
疾患概念の変化
1970年代から骨髄系腫瘍とリンパ系腫瘍の双方の特徴を示す症例は報告されていましたが、8p11転座の関連性を検証する方法はありませんでした。1992年にはじめて8p11転座の関与を認めた症例が報告され、1995年にEMSの疾患概念が提唱されました。WHO2008年分類においてFGFRの関与が重要視され、好酸球増加と遺伝子再構成を伴う骨髄系/リンパ系腫瘍のカテゴリに分類され、WHO2017年分類においても継承されています。
桐戸敬太. 臨床血液. 2019; 60(9): 1157-1165.より改変 和訳、図版解説より一部解説文の図版内への追記及び、デザイン・レイアウトの一部改変を実施
多彩な病型として発症する
本疾患は非常にまれで世界的にも報告例は100例余りしかありませんが、多彩な病型を示すことが知られています。発症時には骨髄増殖性腫瘍(MPN)の病態を示すことが多く、その後、急性骨髄性白血病(AML)に進行する例もあります。また、リンパ系腫瘍としては、 T細胞性急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)もしくはT細胞性リンパ芽球性リンパ腫(T-LBL)の病型として発症することが報告されています。
桐戸敬太. 臨床血液. 2019; 60(9): 1157-1165.より作成
FGFR1融合遺伝子陽性の骨髄性又はリンパ性腫瘍の臨床転帰(全生存率)
本疾患の予後は不良とされ、41例を対象とした後ろ向き解析では、診断時からの1年生存率が43.1%でした。またこの解析では、急性転化症例35例を対象としたサブグループ解析を行っていますが、診断時および診断以降に急性転化した症例では、さらに予後は不良であり、1年生存率が29.8%であったと報告されています。
Umino K, et al. Hematology. 2018; 23(8): 470-477.
Full acknowledgement must be included showing Clinical outcoms of myeloid/lymphod neoplasms with fibroblast growth factor receptor-1 (FGFR1)rearrangement, Umino K et al.,
Hematology, 28 Feb 2018, reprinted by permission of the publisher Informa UK Limited trading as Taylor & Francis Ltd, http://www.tandfonline.com.